こころに騙されないために

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自称心理学徒のブログ

なぜ日本の就活は学生に負担をかけ続けるのか

日本の就活はめんどくさい

いや、就活そのものよりも、就活にともなう「作業」がめんどくさいと思います。

就職に有利になるように勉強に励んだり、インターンシップに参加したりすることは就職活動として行われるのは当然だと思いますが、手書きで履歴書を作成したり、わざわざ説明会に交通費を使って参加するような単純作業はめんどうだし、無駄だと言っていいと思います。

説明会なんて、30分前以上も前に到着して最前列の席を取り合いして、そこから2時間、採用HPを見れば20分で分かることを長々と丁寧に説明するなんてことが平然と行われています。もしどうしても言葉で説明したいとしても、採用HPに動画を貼っておけば良いだけです。そうすれば人事部の仕事も楽になり、学生の手間も減ります*1。私の場合、会場まで自宅から1時間ほどかかることが多いので、説明会1つに4時間程度かかっていました。説明会が変わるだけで、就活は楽になります。

 

手書きの履歴書については、以前も記事を書きました。
rutei.hatenablog.com

 以前まで、手書きの履歴書は、採用にコストをかけられず、マイページシステムを導入できない企業がしかたなく行っているのかと思っていました。しかし、どうも大手企業でも手書きの履歴書やESを書かせる企業があるらしいのです。それも、IT業界で。正直いって、ちょっと理解不能です。

 

「やる気」評価は機能しているのか

企業が手書きの履歴書や説明会参加を学生に課すのは、学生側のやる気を試すためだ、とよく言われます。わざわざ説明会に来て、手書きで時間をかけて履歴書・ESを書いた学生は志望度が高く、やる気があるだろうというわけです。

しかし、そもそも志望度とかやる気というのは採用基準として信用して良いのでしょうか。もちろん内定蹴りされたら元も子もないですが、現実に新卒で入社した志望度が高くやる気がある学生の30%が3年以内に離職しています。業界によっては50%を超えるところもあります。*2「能力がある」学生は3年後も「能力がある」状態であると思われますが、「やる気がある」学生が3年後も「やる気がある」とは限らないわけです。

そもそも、大学生の立場で手に入れられる程度の情報はその企業のほんの一面にすぎないと思います。それで企業のことを好きになるとか、絶対に行きたいと思うという状況が不自然です。よく就活を恋愛に例えたりしますが、後ろ姿しか見えていない人にプロポーズしようとするようなものだと思います。学生が企業に本当に合っているかは、実際に働いてみないとわかりません。

学生の時間を奪う手書きの履歴書や参加必須の説明会で測ろうとしているのはそういう役に立たない指標なのです。それならSPIやESでの足切り幅をあげる方が何倍もましでしょう。

 

日本の学生は差別化できない

ただ、企業としても「やる気」など不明瞭で不安定な基準を取り入れるしかないという側面もあります。なぜなら、日本の大学生は仕事をしたことがないから、仕事ができるかどうかは入社するまでわかりません。加えて、学部学科とは関係なく企業を選ぶので、専門知識も関係なく横一線に並んでいます。学生を判断する指標が不足しているのです。そのため、「人柄」や「学歴」でふるいにかけるのですがそれでも足りないので「やる気」も基準にしていると思われます。

では、海外の大学生は仕事をしているのか?というと、している、と言ってもいい状況だと思います。海外では特別な実績もスキルもない新卒学生の価値はほとんどゼロなのです。特に韓国やアメリカでは大学にいるうちに仕事の実績をつけるために超長期インターンで安い賃金で仕事の経験を積んでから就職活動を行います。というより、特に実績が十分でない場合、大学卒業後もインターンとしてしか雇ってもらえないこともあります。*3特に韓国では実績を多く積むためにわざと留年する学生も少なくないそうです。*4日本の企業のように実績もないのに学生を雇うのはある意味景気がいいわけです。

また、そもそも大学の学部学科を選ぶ時点で、仕事に使える専門知識が得られる学部を選ぶ学生が多いそうです。就職活動でも、芸術系学部や人文系の学部は人気がなく、法学部や経済経営系の学生は有利です。

というわけなので、日本の就職活動はかなり特殊で、仕事をしたことがなく、専門知識もない人をなんとか採用しようとするせいで「人柄」や「やる気」に頼るしか無くなるわけです。

 

 

どうやって対抗するか

手書きの履歴書や参加必須の説明会に学生が全く来なくなれば改善されるかもしれませんが、就活生が団結して対抗することはかなり難しいと思われます。就活生はお互いライバルだからです。履歴書を手書きするだけでやる気を認められるなら書いてやろう、むしろ倍率が下がるならチャンスだ、と考える学生も当然いるので一枚岩にはなれません。

当面個人にできるのは、説明会なしで応募できる企業やSkype面接を取り入れている企業を中心に受けることです。ここで企業名を挙げることはしませんが、マイナビやエージェントを頼りに探せば出てきます。

一番良いのは長期的に、社会全体で長期インターンや専門知識の評価による実績重視の採用にシフトさせていくことだと思います。経団連が1日だけのインターンを認めたことで話題になりましたが、方向性としては寧ろ逆なのかもしれません。

それでは結局、大学生が就活に大学生活のうちの長い時間を使うことには変わりないのでは? と思われるかもしれません。たしかに時間的には変わらないのかもしれませんが、質が異なります。手書きの履歴書や生産性のない説明会に出席させることにより、新卒40万人の貴重な時間を無駄にするよりも、インターンや専門知識の習得のために切磋琢磨してもらった方が社会全体としての生産性が上がることになると思います。

 

*1:もちろん、人事の方や若手社員に質問をぶつけて、HPやパンフレットではわからないことを調査できる意識の高い学生も一定数いますが、そこまでできる学生はほんの一部だし、そういう学生は説明会がなくても個人的にOBOG訪問をしていると思います。

*2:新規学卒者の離職状況 |厚生労働省

*3:隣国の話を聞いたら驚いた : これからの就活の話をしよう。 - 47NEWS(よんななニュース)

*4:英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか (PHP新書)より

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