こころに騙されないために

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自称心理学徒のブログ

就職面接における嘘について:バレるバレないよりも重要なこと

前回『嘘と欺瞞の心理学』という、嘘についての研究についてまとめた学術書を紹介する記事を書きました。

 

rutei.hatenablog.com

今回はさらに、就職面接における嘘について考察してみたいと思います。

 

十分に準備された嘘は見抜けない 

結論から言えば、十分に準備していけば嘘は見抜かれにくい、ということです。前回の記事で紹介したように、そもそも嘘を見抜くこと自体が難しいということに加えて、面接には嘘を見抜きにくくする要素がたくさんあるからです。

例えば、緊張です。嘘をつく際、多くの人が怪しいと感じるポイントとしては緊張している、焦っている、言葉がつまるなどがあります。しかしこれらは、面接という状況ではごく自然な反応です。人事や役員との面接で緊張しない人はいないでしょうし、言葉がつまることもあるでしょう。つまり、嘘をつく際に特徴的な反応と、面接での自然な反応が部分的に一致しているのです。これでは、嘘を見抜くことは格段に難しくなります。

 

加えて、十分な準備期間があることも、嘘をつく側にとっては大きなメリットになります。矛盾点を突かれないように質問を想定して練習しておくことができます。

嘘を見抜こうとする場合、理想的なのは自分は圧倒的に時間をかけて準備している一方で、相手は無防備で、自然な反応を観察でき泳がせることができる状態です。

例えば浮気などを暴く場合、ごく自然な会話でカマをかけたり、わざと疑って軽い嘘を言わせた後に準備してきた証拠Aを提示し、それに対しての言い訳をさせた上で、さらに言い訳と矛盾する証拠Bを提示する、といった具合です。

しかしながら就活の面接はこれと全く逆の構造です。相手に日付まで知られている上に、十分な準備期間を与えてしまっています。嘘をつく側が「よし、絶対にばれない嘘をつくぞ! 」と気合いを入れてやって来た場合、嘘を見抜くことは相当困難だと思います。

 

たまに、人事担当者などが嘘は見抜けるなどと語っている場面を見たことがありますが、私はあれ自体が嘘だと思っています。

そもそも、学生が本当に嘘をついているのかどうか、どうやって確認しているのでしょうか。面接官は嘘だと思っても、実は単に極度に緊張して不審な反応をしてしまった真面目な学生かもしれません。嘘を見抜く能力があると思い込んでいる面接官は、多くの嘘をついていない真面目な学生も冤罪によって落としてしまっている可能性が高いです。

 

疑われたら終わり

とは言っても、じゃあ面接は嘘つき放題なのかと言うと、それも危ない考え方ではあります。ここまでは、嘘を見抜く(嘘か本当かを判定する)ということについて考えて来ましたが、実際の面接官の仕事は嘘を見抜くことではなく「採用するかどうか決める」ことだからです。

だから、「嘘っぽいだけで実は本当に優秀な学生」を落としてしまうというリスクをとって「優秀そうだけど嘘っぽい学生」を落とすという判断をすることはあり得ると思います。

また面接では好感度も重要なので、「嘘かも? 」と疑われてしまった時点でマイナスポイントがついてしまう可能性もあります。

そういったデメリット*1も受け入れる覚悟をした上で、十分に準備して臨めるという状況ならば、嘘をつくことで勝率が上がることもあるかもしれません。

 

嘘を見抜かれないためのテクニック

どうやったら嘘がバレにくくできるのか、という具体的なテクニックについても需要があるかもしれません。

しかしながら、バレない嘘をつくテクニックというものは原理的に存在しないというのが今のところの私の考えです。というのも、前回の記事で確認したように、人によって嘘を嘘っぽく感じるポイントが全然異なるからです。ある人にとっては嘘っぽく感じる仕草が、別の人にとってはそうではないということが無限にあるのが、嘘研究の現実です。ですから、一般的にこうすると見抜かれにくくなるよ、というテクニックもなかなか難しいテーマなのです。

嘘を見抜かれにくくするテクニックを学ぶよりも、無難に好感度を上げる努力をした方が良いと思います。上述のように面接では好感度も重要な要素になってくるし、好感をもっている相手を疑うことはあまりないからです。

具体的には相手の目を見て話す、ボディーランゲージを使う、反応潜時(質問されてから答えるまでの時間)を長くしすぎない、「あー、ええと……」を使いすぎない、姿勢を良くする、などの基本的なことに気を使った方が良いでしょう。

これらの非言語コミュニケーションや話し方についてはまた別の機会に記事にしてみたいと思います。

 

 

人狼ゲームで学ぶコミュニケーションの心理学?嘘と説得、コミュニケーショントレーニング

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*1:また、面接官がメンタリストばりに表情分析や質問法に習熟している可能性もごく稀にはあると思います。実際、メンタリストDaiGoも面接で嘘を見抜くバイトをしていたことがあると告白しています。どうやって学生の嘘を嘘と確認していたのかはわかりませんが。